正社員としての就職を望みながらも、ブランクや経験不足が壁となり、採用に至らない若者は少なくありません。特に年齢を重ねるにつれ、就職へのハードルはさらに高くなっていきます。
そのような状況を解決するサポートをするのが「若者正社員チャレンジ事業」です。
この事業は29歳以下の未就職者や非正規雇用者を対象に、企業での実習機会を提供し、正社員としての就職をサポートしています。
今回は、家庭の事情で一度キャリアを中断し、再就職に苦戦していた29歳のKさんと、創業100年を迎える老舗寝具メーカーの取締役・森さんにお話を伺いました。伝統ある寝具メーカーと若手人材の出会いは、双方にどのような変化をもたらしたのでしょうか。

- 実習体験者 Kさん
大学を卒業後、大手飲食チェーン店に正社員として勤務。1年半勤めたものの、家庭の事情で退社することに。その後はフリーターとして働くも、27歳から無職に。29歳のときに就職活動を再開したが、ブランクのせいか、なかなか採用されず…ある日、この事業のことを知り、意を決し登録。対象年齢ギリギリながらも、登録してから2ヶ月後に無事、1社目の実習先に就職を決めた。

- 企業担当者 森さん
創業100年を迎える老舗製綿所の取締役。木綿わたの卸販売から、寝具や座布団などの綿製品の製造・販売を行う。歴史と実績がある一方で、若手の人材不足に悩んでいた。そんなとき、この事業を知り、参加を決める。実習時から率先してリーダーシップを取り、仕事に取り組むKさんの姿に好感を抱いていたという。その後、面談を経て、採用が決定した。
老舗寝具メーカーの実習で掴んだ正社員への再チャレンジ
- 無職になってしまった理由は?
- 実は一度、就職していたことがあって。大学卒業と同時に、大手の飲食チェーン店に正社員として勤務していました。順風満帆な社会人生活を送っていたのですが、就職から1年半後、家庭の事情で退職せざるを得ない状況になってしまったんです。
その後はフリーターとしてPC部品の製造アルバイトを行っていました。しかし、家庭の事情に専念する必要があり、27歳からはいわゆる無職として暮らすことを余儀なくされたんです。
- この事業を知ったきっかけは?
- 家の方がひと段落したのが29歳。30歳を目前に「今年中には就職するぞ」と奮起して、就職活動をはじめました。
ただ、フリーター生活や無職状態でのブランクが響いてしまってか、なかなか思うように選考が進まなくて…半年間で15社ほど面接しましたが、全て不採用となってしまったんです。結構できるかなと思っていたんですが、この結果にはさすがに凹みましたね。そんなとき、この事業のことを知りました。
- 就職までの道のりに不安はありましたか?
- 対象者が29歳までだったことと、就職したかった気持ちがあったので、すぐに申し込みました。その後、セミナーや合同企業説明会に参加して、今の就職先である会社で実習することに。実習中は全てを吸収するつもりで、一所懸命働きましたね。
そんな中でも、辛さよりも、毎日新しい出会いがある楽しさを強く感じて。お世辞じゃなく、「ここで働きたい!」って本気で思ったんです。実習後の応募にも迷いはなく、無事に採用まで決まり、安心しました。
- これから参加される方へのメッセージ
- 正社員になってから生活リズムや収入が安定したのはもちろんですが、同僚やお客様との関わり合いが生まれたことがうれしかった。「必要とされている」って実感できるんですよね。これが「働きがい」なんだと気がつきました。これは、フリーターや無職のときにはなかった感覚でしたね。
- もちろん、実習を受ければ必ず採用になるというわけではありません。実習中の態度や企業側との相性によっては不採用になることも十分ありえます。でも、若者正社員チャレンジ事業では担当者がしっかりサポートしてくれるので安心です。就職活動で悩んだときには適切なアドバイスをしてくれるので、一人で就活するよりもずっと心強いですよ。
- 申し込もうか悩んでいる方も、まずは話を聞くだけでもいいと思います。身構えずにふらっと参加しみてはいかがでしょう。その一歩さえ踏み出せば、相談相手や同じ目標を持って頑張っている仲間が待っていますよ。
- 「応募してみようかな…でも実際どうなんだろう…」とまだまだ不安な方は、実際の参加者から集めた声やデータをもとに、あなたの「気になる」「知りたい」に答えていく「不安解消ナビ」を是非ご確認ください。
老舗寝具メーカーの取締役が語る若手採用と職場の変化
森さんが経営する会社は、寝具メーカーとして創業100年という長い歴史と確かな技術を持つ一方で、近年は若手人材の確保が課題となっていました。
熟練の職人が持つ木綿わたの扱い方や寝具製造の技術が若い世代に受け継がれなければ、伝統の技は途絶えてしまいます。
長年築いてきた技術を未来へと繋いでいくため、若者正社員チャレンジ事業への参加を決めた森さん。その決断がKさんとの出会いへとつながりました。
実習期間を通じて双方が理解を深め、採用に至った経緯や、若手が加わったことで生まれた職場の変化について話を伺いました。
- この事業に参加し、採用を決定してみてどうでしたか?
- 今までも若手の求人を行っていたんですが、なかなか集まらなくて…そういったタイミングで、この事業と出会えたのは助かりました。企業側からしても、実習期間が設けられるのは魅力的で。経歴だけでは判断できない働きぶりや熱意を、すぐ側で見られる制度ってなかなかないですもんね。
Kさんは、仕事のブランクを全く感じないくらい社交的ですよ。将来性を感じる、理想的な人材を確保できて大満足ですね。入社後も積極的に取り組んでくれているので、非常に感謝しています。
- 実習を通して、会社としての変化はありましたか?
- 「どんな方が実習にくるか?」「どういうプログラムを組めば両者にとって有意義な時間になるか?」と考えた経験は、教育体制の見直しにもつながる、いいきっかけになりました。
また、今までは個々で作業することが多く、仕事が偏りがちだったんですが、Kさんが入社してくれたおかげで仕事が分担され、一人ひとりの負担が軽くなりました。いつの間にか社員同士のコミュニケーションも活発になってきて、笑い声が多くなった気がします。
- 企業側から本事業に参加される方へのメッセージ
- 本気で正社員になりたいなら、この事業は最適だと思います。私たちのように若手の人材を探している会社が多数登録しているので、お互いの希望さえマッチすればスムーズに就職が決まるはずです。
「ずっとニートだった」など、就労経験が浅いことは特に気にしていません。ガッツのある人は実習先でも際立ちますから、積極的にアピールしてくださいね。みなさんが納得のいく体験ができることを願っています。